A⑦収益還元法計算の基礎第7回

 ここからは、毎期の積立額(配分額)が前記の積立額(配分額)に対して一定の割合で逓増又は逓減する場合の係数についてです。

第1期の積立額(配分額)は「a」、第2期は「a(1+G)」、第3期は「a(1+G)²」、第4期は「a(1+G)³」、・・・です。

 純収益が一定の場合のaの部分を逓増又は逓減する場合は上記に置き換えて、かつ、複利現価率又は複利終価率を乗じます。

 ただし注意点として、逓増複利現価率は、便宜上n=5のとき、     {(1+G)/(1+Y)}⁵となっております。実際は
(1+G)⁴/(1+Y)⁵なので、逓増複利現価率は実践的ではありません。

 残る係数の内、毎期の積立額(配分額)が毎期一定率で逓増又は逓減する場合の複利現価率・複利年金現価率から見ていきます。前者を「逓増複利現価率」、後者を「元利逓増年金現価率」という。第1期を通常の複利現価で算定し、第2期以降は、各前期に対して(1+G)倍で純収益が毎期一定率で上昇(G>0)又は下落(G<0)していくことを想定します。第1期の純収益はa、その現価は、a/(1+Y)、第2期の純収益は前記aに、(1+G)を乗じたa(1+G)、その現価はa(1+G)/(1+Y)²、同様に第3期の純収益はa(1+G)²、その現価はa(1+G)²/(1+Y)³で、以下第4期の純収益の現価はa(1+G)³/(1+Y)⁴、第5期の純収益の現価は(1+G)/(1+Y)⁵です。ここで、毎期一定率で純収益が逓増する場合のその現価の総和を求める係数は前述の「元利逓増年金現価率」で、

 Z=a/(1+Y)+a(1+G)/(1+Y)²+a(1+G)²/(1+Y)³+a(1+G)³/(1+Y)⁴+a(1+G)⁴/(1+Y)⁵  ・・・①

 ここで、a=1を代入して、Zについて解くと、

 Z=1/(1+Y)+(1+G)/(1+Y)²+(1+G)²/(1+Y)³

+(1+G)³/(1+Y)⁴+(1+G)⁴/(1+Y)⁵   

 Z={(1+Y)⁵-(1+G)⁵}/(Y-G)(1+Y)⁵     ・・・②

 なお、この式の永久還元法は、

 Z=a/(Y-G)・・・③

 R=Y-G(純収益の変動率Gのときの割引率から還元利回りを求める方法です。)

 収益還元法の純収益が逓増する場合のインウッド式(及びホスコルド式)の左項は、

 P(左項)=a×{(1+Y)⁵-(1+G)⁵}/(Y-G)(1+Y)⁵・・・④

 収益還元法でインウッド式を適用する場合はこの係数を活用できます。逓増又は逓減する場合は「元利逓増年金現価率」が重要で、他の係数は参考程度です。

 以下同様に毎期の積立額が逓増する複利終価率及び償還基金率は、それぞれ名称不明及び「逓増償却率」です。毎期の逓増償却額は上記逓増純収益で、複利終価率は第2回の式を参照ください。両者を乗じて求まります。第1期は純収益1に、複利終価率(1+Y)⁴を乗じて、第2期は純収益(1+G)に、複利終価率(1+Y)³を乗じて、第3期は純収益(1+G)²に、複利終価率(1+Y)²を乗じて、第4期は純収益(1+G)³に、複利終価率(1+Y)を乗じて、第5期は純収益(1+G)⁴に、複利終価率1を乗じて、その総和は、

 Z=(1+Y)⁴+(1+G)(1+Y)³+(1+G)²(1+Y)²

+(1+G)³(1+Y)+(1+G)⁴               

 Z={(1+Y)⁵-(1+G)⁵}/(Y-G)             

 ここで、元本が5年後に(1+G)⁵だけ増加しているから、(1+G)⁵で割り、

 Z={(1+Y)⁵-(1+G)⁵}/(Y-G)(1+G)⁵

・・・(複利年金終価率の逓増版の係数)⑤

 その逆数をとり、

 Z=(Y-G)(1+G)⁵/{(1+Y)⁵-(1+G)⁵}・・・(逓増償却率)⑥

 逓増する年賦償還率は、「元利逓増償還率」です。これは「元利逓増年金現価率」の逆数です。

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