A⑥収益還元法計算の基礎第6回

 残る係数は、毎期の積立額(配分額)が毎期一定率で逓増又は逓減する場合の複利現価率・複利終価率・複利現価の総和に関する二つ・複利終価の総和に関する二つの、計六個のものです。

 先に、毎期一定額の積立額(配分額)の場合の収益還元法の通常の手法を説明します。

 直接還元法の内、永久還元法は、永久期間の複利年金現価率(複利年金現価率は通常は有限期間ですが、説明上永久期間とする。)で、純収益a=1とすると、

 P=1/Y    ・・・①

 直接還元法の内、有期還元法は、留意事項には「純粋な有期還元法」には第1期~第n期(第5期)までの「純収益の現価の総和」のみ算定しています。

 他方、「インウッド式」及び「ホスコルド式」は式が二つの項に分離して、左項で第1期~第n期(第5期)までの「純収益の現価の総和」を、右項で第(n+1)期(第6期)から∞の将来までの「純収益(各経済的利益)の現価の総和」を算定しています。なお、ホスコルド式の左項については後述します。

 また、DCF法は第1期~第n期(第5期)までは、Σの左項で「各期ごとの異なる純収益」の現価の総和を求めて、右項で第(n+1)期(第6期)~∞の将来までの「純収益(各経済的利益)の現価の総和」を算定しています。

 各第1期~第n期(第5期)までの「純収益の現価の総和」は第1回の式・説明を参照ください。ここでは、「インウッド式」・「ホスコルド式」・「DCF法」の各右項について説明します。留意事項のインウッド式(及びホスコルド式)の右項では、

 P(右項)=(PLn+PBn)/(1+Y)⁵ ・・・①

 P(右項)=(PLN-E)/(1+Y)⁵   ・・・②

 基準のDCF法の右項では、

 P(右項)=PR/(1+Y)⁵・・・③

 PR= a₅/R₆      ・・・④

 です。引き続きN=n=5年とする。

 ここで、第6期~∞の将来までの「純収益の現価の総和」を式で表すと、

 P(右項)=a/(1+Y)⁶+a/(1+Y)⁷+a/(1+Y)⁸+・・・ ・・・⑤

 ={1/(1+Y)⁵}{a/(1+Y)+a/(1+Y)²+a/(1+Y)³+・・・}・・・⑥(計算の過程は「収益還元法の概要」参照)

 ⑤式⑥式にa=1を代入して、

 P(右項)=1/(1+Y)⁶+1/(1+Y)⁷+1/(1+Y)⁸+・・・ ・・・⑦

 ={1/(1+Y)⁵}{1/(1+Y)+1/(1+Y)²+1/(1+Y)³+・・・}・・・⑧

 ⑦式は6年間の複利現価率、7年間の複利現価率、8年間の複利現価率、・・・、と6年間~∞の将来までの複利現価率の総和です。

 ここで、第5期を価格時点に設定すると、始点の第6期が第1期になり、第7期は第2期、第8期は第3期、・・・、終点は∞の将来と変わらず、その結果第5期を価格時点に設定すると、第1期~∞の将来までの永久還元法になります。

 式で考えるためには、⑦式から⑧式に変形します。ここでは、

 {1/(1+Y)⁵}を各項の共通項として全体に乗じる形で左端におきます。5年間の複利現価率を共通項にしたので、第6期は1年間(6-5)の複利現価率、第7期は2年間(7-5)の複利現価率、第8期は3年間(8-5)の複利現価率、・・・となります(⑧式の下線部分)。⑧式の太字部分が永久還元法で太字部分の左側は5年間の複利現価率となります。すなわち、太字部分は価格時点が第5期末の直接還元法又は土地残余法となります。直接還元法は①式(5年後の「土地価格+建物価格(―売買仲介手数(仲介業者で売却の場合))」)に適合し、土地残余法は②式(5年後の「土地価格―建物撤去費」)に適合します。また、理論上収益還元法で式を立てるのが一般ですが、土地価格・建物価格は原価法・取引事例比較法・開発法等の手法も代用可能になります。借地権・底地では、さらに式を変形して適用可能です。

 「DCF法」の③式・④式は、⑥式から導出します。⑥式の太字部分は価格時点を5年後とする永久還元法なので、④式の分子PRと同値になります。③式の分母は5年間の複利現価率なので、⑥式の左端の項と同値になります。すなわち④式のa₅・R₆は、それぞれ、a₅=a(⑥式)、R₆=Y(⑥式)であれば、⑥式から③・④式(5年間の複利現価率×5年後を価格時点する永久還元法)が矛盾しません。

 「ホスコルド式」は留意事項で、P(右項)はインウッド式と同様で左項は、

 P(左項)=a×1/{Y+(蓄積利回りiの償還基金率))   ・・・⑦

 ⑦式は、建物の減価償却を類推してください。償還基金率は、定額法より効率的に配分額を少なめにしました。1/「Y+iの償還基金率」は利回りYでない利回りiの方だけ定額法より合理的に運用して減価償却分を小さくしている計算方法であると考えるのです。(1/利回りの和)の特殊版です。建物(鉱山等危険性の高いの工作物)の減価償却は耐用年数が短期で建物の減価償却率より高位な利回りiの償還基金率で、その他に係る利回りは鉱山の短期の有期還元でやや高位のYで合算しています。

 「Y+蓄積利回りIの償還基金率」=「償却率を含まない割引率+建物(鉱山等)の償却率」と考えます。有期還元の有期期間の年賦償還率に相当するので、有期期間の長短にもよりますが、Yは5%~8%程度です。

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