A④収益還元法計算の基礎第4回

 留意事項の収益還元法のところに「減価償却費の算定方法には定額法、償還基金率を用いる方法等があり、適切に用いることが必要である。」定額法は簡単ですが、償還基金率を用いる方法はどうでしょうか。端的に言えば、将来の建物の建替え費用を積み立てるという点は定額法と同様ですが、1年複利で運用して早期に積み立てる分は多額の利息を生むので毎期の積立額は利息分定額法より少なくなります(通常建物の償却期間は長期ですが、ここでは計算を簡単化するため、償却期間は5年に設定しています。)。

 A=Z(1+Y)⁴+Z(1+Y)³+Z(1+Y)²+Z(1+Y)+Z

  =Z×{(1+Y)⁵-1}/Y    ・・・①

 1=Z(1+Y)⁴+Z(1+Y)³+Z(1+Y)²+Z(1+Y)+Z

  =Z×{(1+Y)⁵-1}/Y    ・・・②

 Z=A×Y/{(1+Y)⁵-1}   ・・・③

 Z=Y/{(1+Y)⁵-1}      ・・・④

 (Z:求める毎期の積立額、Y:割引率、A:建物価格)

 ①式は、5年間減価償却して積立額を1年複利で運用して5年後に建物価格(A)まで積み立てるために毎期一定額(Z)とするものです。 

 留意点は第1期の積立額は5年後まで運用するから4年間の運用ですなわち4年間の複利終価率を乗じて求めます。第2期は3年間、第3期は2年間、第4期は1年間、第5期はゼロ年間の運用で、それぞれ毎期の積立額の各複利終価率を求めて、毎期の積立額の複利終価の総和が建物価格と等しいとして方程式を解きます(割引率:5.0%)。

 ②式は、①式にA=1を代入して求めています。この式のZが償還基金率です。複利年金現価率と同様に建物価格が1億円であれば、Z×1億円で毎期の積立額が求まります。

 4年間の複利終価率から0年間の複利終価率の総和(5年間の複利年金終価率、すなわち、償還基金率の逆数)は、

 (1+Y)⁴+(1+Y)³+(1+Y)²+(1+Y)+1

=1.21550625+1.157625+1.1025+1.05+1

=5.52563125(5年間の複利終価率)

 定額法では1×5=5です(0.52563125が利息分です。)。

 Zはその逆数なので、1/5.52563125=0.18097480(③式も同様の結果)

 定額法では、1/5年=0.2なので、毎期の積立額の運用による減少額は、

 0.2―0.18097480=0.0190252である。

 1億円の建物は5年間の償却期間で、定額法では毎期の積立額が2,000万円(1億/5年間)に対して、償還基金率によると18,097,480円(0.18097480×1億円)の積立で済みます。利息分は2,000万円―18,097,480円=1,902,520円の毎期の積立の減少分です。

 どの係数も定額法との比較で、利息計算・割引計算の意味を理解できます

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