③収益還元法の概要

 収益還元法の計算式は、すべて同様の枠組みで考察します。すなわち第1期の純収益の現在価値から順に加算して、第2期の純収益の現在価値、第3期の純収益の現在価値、第4期の純収益の現在価値、第5期の純収益の現在価値、・・・、無限の将来までの純収益の現在価値の総和を求めるものです。要説に式の説明がございます。

 P=A1/(1+Y)+A2/(1+Y)²+A3/(1+Y)³

 +A4/(1+Y)⁴+A5/(1+Y)⁵+・・・ ・・・①

(P:収益価格、An:n期の純収益、Y:割引率又は還元利回り)

 基本的に、永久還元法だけでなく、土地残余法、建物残余法、インウッド式、ホスコルド式、DCF法のすべてが同様の式です。

 永久還元法は、A=A1=A2=A3=A4=A5=・・・=A∞ のときで、

 P=A/Y です。

 土地残余法・建物残余法は、土地帰属純収益又は建物帰属純収益=Aとおくと、

 P=A/Y です。

 ここで、インウッド式及びホスコルド式の有期還元期間を3年かつDCF法の保有期間(又は分析期間)を3年とします(他の年数でも考え方は同様です。)。

 左項・右項の記載は、留意事項の各式の左項・右項です。

 DCF法の左項(Σの式)は第1期~第3期の純収益の現在価値の総和、DCF法の右項(復帰価格の現価)は第4期~無限の将来の純収益の現在価値の総和です。

 インウッド式及びホスコルド式もDCF法の左項・右項と同様です。有期還元期間の左項は第1期~第3期の純収益の現在価値の総和、有期還元期間以降の期間である右項は第4期~無限の将来の純収益の現在価値の総和です。

 A=A1=A2=A3とすると、インウッド式及びホスコルド式の左項になります。

 なお、DCF法の左項(Σの式)は毎期の純収益は異なります。

 インウッド式の左項は、

 P(左項)=A1/(1+Y)+A2/(1+Y)²+A3/(1+Y)³

      =A×{(1+Y)³-1}/{Y(1+Y)³}・・・②

 ②式太字部分は「複利年金現価率」です。

 ホスコルド式の左項は、

 ②式=A×1/〔Y+{Y/(1+Y)³-1}〕・・・③

 ③式太字部分のYをIにするとホスコルド式となります。

 ③式は、P=A/(Y+償却率)

 と考えられます。減価償却の方法は定額法・償還基金率による方法の二つがあるので、償還基金率(③式太字部分)は建物(鉱山等)の償却率といえます。このときYは償却率を含まない割引率です。なお、Y(割引率)は通常償却率を含むものですが、ホスコルド式では含まないようです。

 第4期~無限の将来の純収益の現在価値の式を変形します。

 A4/(1+Y)⁴=1/(1+Y)³×A4/(1+Y)

 A5/(1+Y)⁵=1/(1+Y)³×A5/(1+Y)²

 A6/(1+Y)⁶=1/(1+Y)³×A6/(1+Y)³

 A7/(1+Y)⁷=1/(1+Y)³×A7/(1+Y)⁴

 A8/(1+Y)⁸=1/(1+Y)³×A8/(1+Y)⁵

            ・

            ・

            ・

 第4期~無限の将来の式は1/(1+Y)³を共通項として表します。

 P(右項)=A4/(1+Y)⁴+A5/(1+Y)⁵+A6/(1+Y)⁶

 +A7/(1+Y)⁷+ A8/(1+Y)⁸+・・・

 ={1/(1+Y)³}{A4/(1+Y)+A5/(1+Y)²

           +A6/(1+Y)³+A7/(1+Y)⁴

           +A8/(1+Y)⁵・・・}・・・④

        ={1/(1+Y)³}×A/ ・・・⑤

 ④式は、太字部分が3年間の複利現価率で、太字部分を除く右側全体は、永久還元式です(A=A4=A5=A6=A7=A8=・・・=A∞と仮定する。)。よって、④式=⑤式が成り立ちます。

 すなわち、④式太字部分以外の右側全体は価格時点を3年後として第1期~無限の将来の純収益の現在価値の総和です。太字部分の複利現価率を乗じることで、3年後の収益価格を現在価値に割引しています。留意事項で表すと、

 ⑤式={1/(1+Y)³}×(PLn+PBn)

 ={1/(1+Y)³}×(PLN-E)

 なお、(PLn+PBn)も(PLN-E)も、価格時点を3年後とした場合の永久還元法での収益価格(直接還元法、土地残余法)が理論的ですが、3年後の対象不動産の価格なので、積算価格、比準価格及び開発法による価格での代用も可能です。

 DCF法の右項は、3年間の複利現価率×A(n+1期の純収益)/R3(最終還元利回り)ですが、⑤式の太字部分のYをR3に置き換えると、

 ⑤式={1/(1+Y)³}×A/R3

 です。

 まず覚えていただく結論は、「DCF法・インウッド式・ホスコルド式の左項は、保有(分析)期間及び有期還元期間(第1期~第n期)」の純収益の現在価値の総和で、「DCF法・インウッド式・ホスコルド式の右項は保有(分析)期間・有期還元期間以降の期間(第n+1期~無限の将来)」の純収益の現在価値の総和です。

 なお、(PLn+PBn)は仲介手数料Fを使用すると(PLn+PBn-F)に、(PLN-E)は残存期間満了間近の定期借地権は(-E)、当該定期借地権付の底地は(PLN)です。

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