入門編⑩経済力論

 「経済力が向上した。」という場合、二つの側面があります。一つは、「国民所得が向上した。」、すなわち、売上が増加しているということです(これが一般的です。)。「相対的経済力」です。では、もう一つはというと、売上はそれほど増加していないが国内の「商品・製品・サービスの質・量が向上した。」ということです。「絶対的経済力」です。

 後述の「円高ドル安論」を例に考察します。アメリカ製品は、円高ドル安によって日本における円建て価格が、相対的に安価になり純輸出が増加して国民所得が増加しました。上記前者の売上が増加しました(相対的経済力)。しかし、アメリカの経営努力は、日本の経営努力ほど大きくありません。日本製品は、円高ドル安によってアメリカにおけるドル建て価格が、相対的に高価になっている状態を強いられる市場で経営努力を行いました。上記後者の商品等の質・量が向上しました(絶対的経済力)。

 円高ドル安下では、通常円はデフレ傾向(円の価値上昇)にあります。円の購買力が向上しています。売上が伸び悩んでいても、円の購買力が向上しているということは経済力が向上したと言えます。
 アメリカにおける上記後者(商品等の質・量)及び日本における上記前者(売上)についても小さいながらも向上しているでしょう。将来的な展望を重視すると上記後者に注力する方が望ましいです。

 繰り返しになりますがまとめますと、経済力と表現するとき、二つの側面があります。そこで、私は「絶対的経済力」「相対的経済力」を定義します。「絶対的経済力」とは、国全体の商品・製品・サービスの質・量の総合力をいい、「相対的経済力」とは、相対的な経済情勢の影響の下になる国民所得額をいいます。

 円高ドル安論で後述しますが、絶対的経済力は高めると現在のみならず将来にも好影響を与えます。

 アメリカについては、オバマ大統領の時代までは絶対的経済力は軽視されていました。円高ドル安で、ドルを切り下げつつ国民所得額を向上させていました。トランプ大統領になってからは、絶対的経済力の向上も考慮して自国の低位産業の保護を始めました(時には関税をかけます。)。

 日本については、円高ドル安で、円の購買力を向上させつつ、経営合理化によって絶対的経済力を向上させました。相対的経済力は、あまり重視していません。それが正解でした。

 「米中貿易摩擦で、経済が不況であります。」という主張は、日本経済にとって米中は直接的な関係にはありませんので、あまり的を射ていません。日本の産業にとっては、アメリカの保護産業と同業者が競争関係になる以外は、直接的な影響は小さいといえます。

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