④普通借地権・定期借地権の借地権価格・底地価格及び地代

 普通借地権は一般的に永続するから借地権価格が顕在化しているが、他方定期借地権は契約終了時点でゼロとなるので最終的には顕在化しているといえない。

 解説文によると、定期借地権で権利金等の授受があると、税務上も「前払地代」として処理するそうです。つまり元本(更地価格の一部)を取得すると考えません。地代の前払をしています。普通借地権は同様の場合元本(更地価格の一部)を取得するといえます。

 また、収益物件の貸家及びその敷地で、最有効使用でかつ容積率を消化している場合は借地権付建物の価格と底地価格の和は貸家及びその敷地の価格に等しくなり、土地の権利が借地権と底地に分割していても完全所有権でないことの不利益がないものもあります。

 契約時に多額の権利金を支払うとその部分は元本を取得しています(普通借地権)。定期借地権の場合は前払地代を支払っています。ただ、定期借地権で多額の一時金の授受があると、本体の純賃料・基礎価格間では期待利回りは2.0%~5.0%程度に対して、当該一時金の運用益及び償却額算定上の運用利回りは1.0%~2.0%というのは両者の均衡が悪いです。多額の一時金の利回りも高位にすべきです。

 一般に、借地権価格が更地地価格の何割かを占めていると、果実である地代の元本は底地価格相当額としないで更地価格とすると、所有していない部分の元本部分が果実を生むことになってしまい、説明が困難です。

⑤割引率は「償却前の純収益に対応するもの(償却率を含むもの)」

 Yは基準には償却前・償却後の区別はありませんが、通常Rは償却前のもので、基準ではYはDCF法及び有期還元法で適用されているので、すべて償却前のもの(償却率を含むもの)と考えるのが自然です。

 TACの古いテキストも「DCF法は建物の減価償却は復帰価格で考慮されるから純収益は償却前のものを採用する。」と記載されていました。

 これは単に純収益は減価償却を控除しないものを採用しているという趣旨です。割引率で償却後のもの(償却率を含まないもの)は適用されていません。すなわち、DCF法でも割引率で減価償却は考慮済みです。

⑥ホスコルド式について

 ホスコルド式は、

 P(左項)=a×1/〔Y+I/{(1+I)ⁿ-1}〕(収益現価率)・・・①

      =a×1/[Y(1+Y)ⁿ/{(1+Y)ⁿ-1}] (年賦償還率)・・・②

 ①の太字部分全体はY+(Iの償還基金率)で、I=Yのときに②が成立します。

 永久還元法との比較では、太字部分全体を「還元利回りR」と考えられます。ただし、対象期間はn年であるから同じ土俵では考えられません。

 インウッド式との比較では、「蓄積利回りIの償還基金率」を建物償却率とすると、「Y+建物償却率」は「利回りを標準的なもの、期間n年の年賦償還率」を表しています。

 一般的な場合、「利回り5.0%、期間5年の年賦償還率」は23.1%で、「利回り5.0%、期間10年の年賦償還率」は13.0%ある。他方、償還基金率は、10%・5年で16.4%、10%・10年で6.3%です。

 ホスコルド式は、I=10%・全体利回りを5.0%の年賦償還率とすると、期間5年のとき、期間10年のときともに、Y=6.7%といえます。

 蓄積利回りIの償還基金率は、建物(鉱山等)の減価償却費を表しているといえます。Iの償還基金率は、償却期間が短期であれば通常建物の減価償却率は高いと考えられます。

 これにより、Yは償却率を含まない割引率で、減価償却分を含めて、年賦償還率相当です。

 ホスコルド式については、あまり考えたことがなく、一般にYが通常の割引率より高水準であると気づきませんでした。

期間 10%償還基金率 5%年賦償還率  Y
5年 16.4% 23.1%  6.7%
10年  6.3% 13.0%  6.7%
15年   3.1%  9.6%  6.5%
20年  1.7%  8.0%  6.3%

⑦土地賃貸借における元本

 土地賃貸借の場合は、元本を土地の完全所有権(更地相当)と見るか、底地と見るか争いがあります。私は賃料差額還元法の適用においては、完全所有権を元本として相当賃料を求めて賃料差額の査定を行うべきです。通常の正常賃料を求める場合の積算法の適用においては、元本としての基礎価格は底地価格相当と見るのが理論的です。

 更地価格相当が理論的な場合には、元本として完全所有権価格を、底地価格相当が理論的な場合には、元本として底地価格を、適用すべきです。