⑪立退料評価

 建物の老朽化に伴い居住者・テナント等の立ち退きを求めることがあります。追い出す側・立ち退き側でも、適正にご対応いただきたいものです。
 一般的に、立退料の評価では主張の仕方に多様性があります。従いまして、各当事者ごとに適正な主張を行うことが重要です。
 また、弁護士でも対応可能ですが、不動産鑑定士の方が金額の主張ではより適正ではないでしょうか。
 立退料の評価が必要になりましたら、是非不動産鑑定士にご相談ください。

⑫簡易の価格等調査

 不動産鑑定の簡易版として、「簡易の価格等調査」と言われるものがあります。不動産鑑定ほど厳格な手順を踏みませんが、依頼目的等で厳格な説明性が求められない場合に有効です。

 タイトルは、「鑑定評価書」ではなく、「意見書」「調査報告書」が一般的です。「鑑定」「評価」という文言の使用が禁止されております。

 簡易の価格等調査がご希望でしたら、お気軽にお問い合わせください。依頼目的等をお伺いしてご一緒に検討させていただきます。

⑬無道路地の住宅地価格

 無道路地というのは、建築基準法上の接道を満たしていない土地のことです。
 地域の標準的価格は、通常50,000円/㎡と仮定すると、10,000~35,000円/㎡くらいというのが一般的です。
 原則として、4.0m以上の建築基準法上の道路に2.0m以上接道しないと、建物の建築ができません。
 したがって、当該道路に接道するために、土地を買い取ったり、通路を開設したりします。その場合の接道想定後の価格から、買い取り費用又は通路開設費用等を控除して、不確実性によるリスクを勘案して、確実性を乗じて無道路地価格とします。
 不確実性が高いほど、土地価格は低価格となります。不確実性の経済学の考え方を適用します。

 仮に、買い取り又は通路開設交渉に自信がある方は、無道路地を購入して、低額費用で土地価格を上昇させて、売却できます。公開の物件で、無道路地がありましたら、価格が地域の標準的価格より、いくら安いかに注目してください。

A①取引事例比較法

 不動産鑑定評価手法をご紹介します。第一に、土地の取引事例比較法です。取引事例の取引価格をスタートにおいて、①事情補正、②時点修正、③地域格差修正、④個別格差修正を行って、対象不動産である土地の価格を求めるものです。
 一般に、取引事例は3件~5件を採用します。これらの価格を相互に比較検討して、取引事例比較法の試算価格である比準価格を試算します(不動産鑑定評価手法の適用によって求められた価格を試算価格、取引事例比較法によって求められた試算価格を比準価格と言います。)。
 取引事例比較法は、市場性に重点を置いた実証的な価格と言われます。

A②収益還元法(土地残余法)

 収益還元法は、主として収益物件について適用します。土地についての収益還元法を特に土地残余法といいます。商業地・工業地・賃貸共同住宅が適当な住宅地等について適用します。
 このような地域では土地単体ではなく、通常建物の敷地としての利用が最有効使用なので、土地残余法の適用に当たっては、土地建物一体としての純収益から建物帰属純収益を控除して土地帰属純収益を求めて、還元利回り(元本価格に対する果実賃料の割合)で割算して、収益還元法(土地残余法)による試算価格である収益価格が求まります(不動産鑑定評価手法の適用により求めた価格を試算価格、収益還元法により求めた試算価格を収益価格といいます。)。
 土地建物一体の純収益は貸室賃料収入等の総収益から、維持管理費等の総費用を控除して求めます。

 愛知県限定の話を例にすると、名古屋市中心部の商業地の収益性が特に高いです。
 それと対極なのは、一般の住宅地における賃貸共同住宅です。相続税対策等で投資する方が多く、一般的に収益性は低いです。

A③開発法

 大規模画地の住宅地の場合に適用する手法です。分譲マンション又は宅地分譲地とするシナリオで、分譲収入の割引現価から諸費用の割引現価を控除して対象不動産の価格を求めるものです。
 分譲マンションは、立地条件が良く、利便性が高い場合等に想定します。宅地分譲地の想定は、適正規模の戸建住宅地よりも、価格が低いことが多いです。道路・公園等の潰れ地、造成工事費、販売費及び一般管理費等が計上されるからです。
 割引現価というのは、過去の金額は現在まで運用すると利息が付きますが、それと反対に将来の金額は前借すると利息分割引かれるので、減額計算するのです。

A④原価法

 土地と建物からなる不動産について、費用性に着目した手法です。土地については既成市街地の場合、前述の取引事例比較法を準用して求めて、建物のみ原価法を適用します。
 建物は新築かつ最有効使用を想定した再調達原価を求めて、経年及び偶発的損傷を考慮して減価修正を行います。

 なお、不動産鑑定評価手法により求められた価格を試算価格といい、原価法により求められた試算価格を積算価格といいます。

A⑤土地・建物の収益還元法

 土地・建物の収益還元法です。貸室賃料収入等の総収益から、維持管理費等の総費用を控除して、純収益を求めて、還元利回りで割り算する手法です。

 主として収益物件に適用します。収益性に着目した手法です。