基礎編⑮20~21世紀の経済論

 20世紀の経済論は、大きく捉えると資本主義経済を中心として、共産主義経済が対峙している体制でした。経済学を勉強した経験がある方は、資本主義の歴史の3段階をご存知でしょうか。①重商主義、②自由主義、③帝国主義(独占資本主義)です。重商主義段階が初めに現れる資本主義に不可欠な段階で、資本家に資本の蓄積が行われるもので、政府の政策も資本家を優遇するもので、例えば商売を独占する特許許可等です。自由主義段階は拡大再生産が継続する段階で、歴史的にはヨーロッパの植民地拡大競争の時代に有用でありました。多くの業種で競争を促進しつつ、拡大しました。市場が限定された業種では過当競争となり、不適切です。帝国主義段階は、市場が限定される業種で規制をかけて過当競争を抑制しつつ、商品・製品・サービスの向上を促進するものです。歴史的にはヨーロッパの植民地拡大競争が終了した段階以降です。いずれの段階も資本家階級が強く、労働者階級が弱いです。

 共産主義経済はなぜ、起こったのでしょうか。資本主義の欠点を思い出してください。資本家が生産活動で取得した余剰利益を搾取しているから、労働者が疲弊するということです。労働者の生活を保護しようというのが考え方の出発点です。ではなぜ、1917年のロシアで共産主義革命が起こったのでしょうか。仮に資本主義の熟成度が相当程度高ければ、政治的な活動の指導者も資本家かそれに準ずる立場の指導者が中心になるものです。たぶん、当時のロシアでは資本家の力はそれほど強固ではなかったのでしょう。当時の日本では、どうでしょうか。大正6年です。資本の蓄積も終わり、大正デモクラシーとともに、自由主義段階になっていると考えます。少なくともロシアよりは資本主義の熟成度は高いです。

 では共産主義は何がいけなかったのでしょうか。市場原理を排除してしまったため、権力のピラミッド型単純構造で、意思決定機関が少なくなってしまいました。結果、意思決定が硬直化しました。構造的欠陥で優秀な人材を活かしきれなかったのが、失敗の原因でしょう。

 ここで日本では、共産主義の影響はゼロだったのでしょうか。労働運動は活発化していて労働者は手厚い保護を受けていました。ゴルバチョフ元大統領の言葉があります。「世界で最も繁栄した社会主義国は日本である。」これは言うまでもありませんが、資本主義の中で労働者保護を適度に行われたということなのです。現在資本主義の③帝国主義段階です。近年の携帯電話・現在のスマートフォン等に代表されるように、拡大再生産できる分野だけを自由競争として、他の一般必需品分野等は適度な規制を行うことが適正な資本主義です。労働者賃金を高くすることは利益を低くすることになるので、技術向上・費用削減等の経営合理化は常に必要です。

 私は社会民主主義という考え方を正確には理解していませんが、市場原理を行わない純粋な計画経済が社会主義、市場原理を行いつつ労働者保護をも重視するのが社会民主主義であるとすると、今後は社会民主主義が政治の中心となると考えます。

 すなわち、市場経済と労働者保護という、資本主義・社会主義のそれぞれの長所・短所の相互補完を大義名分に政策を実施していくべきです。

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