A③収益還元法計算の基礎第3回
収益還元法は、「純収益(各経済的利益)の現在価値の総和」を求めるという理論を貫徹してください。永久還元法と有期還元法では、第1期~第5期まで同じ足し算をします(すべて有期還元法・DCF法では、保有期間・分析期間を5年間に統一しています。)。第6期~∞の将来までを永久還元法・有期還元法・DCF法で分けて考えます(第6期~∞の有期還元法・DCF法は、「A⑥収益還元法計算の基礎第6回」を参照。)。
永久還元法は、
Z=a/(1+Y)+a/(1+Y)²+a/(1+Y)³+a/(1+Y)⁴+a/(1+Y)⁵+・・・=a/Y ・・・①
Z=1/(1+Y)+1/(1+Y)²+1/(1+Y)³+1/(1+Y)⁴+1/(1+Y)⁵+・・・=1/Y ・・・②
有期還元法の第1期~第5期までは、
Z=a/(1+Y)+a/(1+Y)²+a/(1+Y)³+a/(1+Y)⁴+a/(1+Y)⁵=a×{(1+Y)⁵-1}/Y(1+Y)⁵・・・③
Z=1/(1+Y)+1/(1+Y)²+1/(1+Y)³+1/(1+Y)⁴+1/(1+Y)⁵={(1+Y)⁵-1}/Y(1+Y)⁵ ・・・④
(Z:求める価格、a:毎期の純収益、Y:割引率です。)
②式は、①式にa=1を代入して求めています。この式が永久の複利年金現価率です(ただし、通常「複利年金現価率」というのは有期です。)。
④式は、③式にa=1を代入して求めています。この式が複利年金現価率です。複利現価率の5年間の総和です。割引率を5.0%で説明します。計算が面倒でなければ第1期~第5期の複利現価率の総和でも、5年間の複利年金現価率でも、どちらでも同じ結果です。すなわち「複利年金現価率」が「純収益の現在価値の総和」そのものなのです。
第1期~第5期の複利現価率の総和(④式の真中の辺の計算):
0.952381+0.907029+0.863838+0.822702+0.783526=4.329476
5年間の複利年金現価率(④式の右辺の計算):4.329477
少数第7位を四捨五入したため、0.000001誤差が生じています。
仮に割引計算をしない定額法では、1×5=5です。
5-04329477=0.670523は割引計算上の純収益の減少分です。
なお、DCF法は、第1期~第5期の純収益を別個に数値設定するので、5年間まとめて計算するには、純収益の現価を加重平均した平均単年度純収益に置き換えることで計算上可能です。
複利年金現価率等の係数は、すべて主要な数値(③式のa)を1とした場合のZを求めるためのものです。したがって、毎期の純収益が100万円であれば、④式のZ×100万円で求まります。