⑥損害賠償請求における根拠条文

 民法第415条 債務不履行責任
 民法第709条 不法行為責任
 民法第715条 使用者責任(不法行為責任の特殊類型)
 民法第710条~第715条 不法行為責任の特殊類型

 労働問題において、損害賠償請求を行う場合民法上415条の債務不履行責任及び709条の不法行為責任(715条の使用者責任は不法行為責任の一つ)の二つがあります。

 不法行為より債務不履行を適用した方が被害者にとって、立証責任・時効期間等の観点で有利であります。なお、判例通説では、両者は選択主張が可能です。

 415条の債務不履行責任は、当事者が契約関係にあり、債務が不履行にある場合です。債務が不履行であれば、債務不履行に非該当であるという立証責任は債務者側です。当該債権の時効期間は行使できることを知った時から5年間又は行使できる時から10年間のいずれか短期の期間です。

 債務不履行責任の拡張解釈としては、安全配慮義務があり、本来雇用契約にはないが、雇用契約の付随義務として、安全配慮義務があるという解釈をして、これに違反すると安全配慮義務違反による債務不履行であると考える立場です。これは昭和時代では前記一般条項の信義則(第1条第2項)による義務でしたが、現在では労働契約法等に明文化されております。

 709条の不法行為責任は、当事者の契約関係は問わず、故意・過失により、不法に損害を与えた場合です。立証責任は被害者側です。時効期間は加害者・損害を知ってから3年又は行為の時から20年のうちどちらか短期の期間です。

 715条の使用者責任は、709条の不法行為が成立する場合の使用者の監督責任であり、使用者の故意・過失がある場合です。

 709条・715条がともに成立する場合、連帯債務になります。被害者に賠償した金額が責任の負担部分より多い場合、求償が可能であれば、不法行為者・使用者間で超過部分を求償して精算できます。求償は他の連帯債務者が資力がない場合は不可能です。

 連帯債務とは、全額について連帯して債務を負うが、通常自身の負担部分があり、負担部分を超過する部分についても支払義務はあるものの、他の連帯債務者で負担部分より少ない弁済しかしていないものに求償できます。しかし、他の連帯債務者に資力がなければ求償できません。

 715条は使用者から不法行為者への求償を認めています。他方、不法行為者から使用者への求償は明文の規定はなく、解釈で決定します。

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